栄養の指標

経口摂取率

分子・分母
 分子:経口食数
 分母:絶食数+提供食事数
指標の説明
 口からの栄養摂取は、栄養法の選択という問題にとどまらず、患者のQOLに深く結びつくものです。また、急性期医療の中で主たる疾病や病態へ対応の中で、摂食・嚥下機能の維持が後回しになり、気がつけば摂食・嚥下機能の著しい低下を招いていたということも少なくありません。口から食べるという大事な行為へのケアや援助を確実に実施していくための指標です。
指標の種類
 プロセス
考察
 入院時に、食事でのムセや義歯の使用、脳血管障害、誤嚥性肺炎の既往を確認し、摂食・嚥下障害リスクを判定しています。多職種で栄養管理計画書を作成し、安全な食形態での必要栄養量の早期獲得を目指しています。摂食機能に問題がある場合は、栄養サポートチームや摂食・嚥下チームが介入し、さらに詳しく摂食・嚥下障害のチェックを行います。
 2022年度は完全側臥位法(食事の姿勢調整で嚥下障害リスクを軽減)により経口摂取を継続できた症例を経験しました。嚥下障害リスクの軽減がはかれるようにスタッフへの学習を広げていきます。

絶食率

分子・分母
 分子:絶食した食数
 分母:絶食数+提供食事数
指標の説明
 栄養投与ルート選択の原則として、「腸が機能しているときには腸を利用する:When the gut works, use it. 」ことが奨励されています。経腸栄養は、より生理的であり、腸に備わったリンパ装置や内分泌機能を維持し、感染などの生命リスクの低い投与法といわれています。絶食率は、この経管栄養がどの程度実施されているかをみる指標として設定しました。
指標の種類
 プロセス
考察
 絶食率はここ数年低下を続けています。早期の経腸栄養開始や嚥下障害の評価、摂食訓練を行うことで安全な栄養経路での栄養補給ができていると考えます。
 経口摂取が困難な場合でも、経鼻チューブから経腸栄養を行うことで必要な栄養量を確保でき、早期の栄養改善につながります。栄養不良は病気の治癒を遅らせるだけでなく筋肉量の低下も招くため、ADLの低下にもつながります。今年度はCOVID-19後に経口摂取ができなくなり胃瘻を造設された事例もありました。現場ではしばしば胃瘻造設に関わる倫理的問題に遭遇します。職場での倫理カンファレンスや倫理コンサルタントチームとの共同を通して胃瘻造設の倫理に関わる問題への対応を進めています。